ノイズ対策について、ノイズの仕組みやノイズの種類を解説します

技術情報

ノイズ対策

サージとノイズの違い

雷サージ

サージは、電気回路や電気系統に通常の電圧を越えて、瞬間的あるいは、断続的に発生する過電圧の事を言います。このサージの電圧によって、電気機器は絶縁破壊や機能停止、劣化などの影響を受けます。
サージは、図に示すように、高電圧で低周波です。サージの発生原因としては、自然現象による雷サージ(直撃雷サージ、誘導雷サージ)、電気回路系統の過渡現象による、開閉サージ、故障等による過電圧サージ等があります。

ノイズ

ノイズは、半導体など弱電機器を破壊する程では無いが、正常な動作に支障を生じさせたり、コンピュータのメモリやディスク内の記憶を喪失させたりする虞れのあるレベルの異常電圧の事を言います。
ノイズは図に示すように、サージに比べ低電圧で高周波です。(出典:橋本信雄著「雷とサージ」)

ノイズとは

解り易いノイズ事例

【ノイズ対策が要求される背景(経緯)】

近年、電源用スイッチングデバイスの発達に伴い、工場から一般家庭に至るまでさまざまな機器の電力変換装置としてインバータが使用され、省エネルギー、環境対策や生産向上に大きく貢献しています。
また、一方では電力変換装置から発生する電磁波(高周波ノイズ)が、機器自身も含め他の機器の誤動作を招いたり、ラジオ、TV、通信機器への障害発生など大きな社会問題となっています。
このような社会環境から必然的に電磁波対策の法規制が国際的に、また各国で実施されています。

【ノイズ障害とは】

  1. ・工場へ新しい設備を導入したら、ノイズトラブルが発生した!
  2. ・カーラジオからザーとノイズが入るようになったり、または聞こえない!
  3. ・コードレス電話にノイズが入り聞き取りにくい!

このような障害の経験はありませんか?これらの障害の多くはノイズ障害といわれている現象です。
省エネや加工精度向上などの目的で普及が進んでいるインバータ機器やサーボ機器からのノイズが障害を発生させています。

ノイズの発生の仕組み

(1)ノイズ発生メカニズム

汎用インバータは周波数と電圧を制御する事によりモータの回転を制御する可変速装置です。
優れた安定性、制御性、省エネ性を備えており、加工機械、搬送機械、ファン、ポンプなど多くの産業機器に使用されています。
インバータは交流電源を一旦直流に変換し、スイッチング素子により高速にON-OFFを繰り返す事で連続するパルス波形を形成し(PWM波形)交流を造り出しています。そのため、インバータの出力電圧波形は高周波ノイズを含んだ波形であり、インバータの入力電圧波形の正弦波にもノイズが重畳しています。

(2)ノイズ伝播ルート

【伝導ノイズ】

インバータ内で発生したノイズが、導体を伝わり周辺の機器に影響を与えます。
①電源線を伝わる。
②アース線を伝わる。
③センサーの信号やシールド線を経由して伝わる。

【誘導ノイズ】

ノイズ電流の流れているインバータの入力ラインや出力ラインに、周辺機器の電源線や信号線を近づけると、電磁誘導および静電誘導によりノイズが誘導されます。

【放射ノイズ】

インバータ内で発生したノイズが、入力ラインや出力ラインの電線がアンテナとなり、空中に放射され周辺機器に影響を与えます。

(3)伝導ノイズの種類

伝導ノイズはその伝播ルートによってディファレンシャルモードノイズとコモンモードノイズに分類できます。
ディファレンシャルモードノイズは電源ライン間で発生します。負荷電流や信号と同じ方向に流れるノイズ成分です。
コモンモードノイズは電源ラインから機器の金属フレームなどからアースラインに流れ、ケーブルの浮遊容量などを経由して電源ラインに戻ってきます。
ディファレンシャルモードノイズは行きと帰りのノイズの方向が逆で配線距離がある程度長いと次第に減衰してしまいます。コモンモードノイズは同じ方向に流れるため配線距離が長くても中々減衰しません。
ノイズ対策としてはコモンモードノイズの対策が重要になります。

ノイズの種類

ノイズには雷や静電気といった自然ノイズと、放送波や機器類から発生する人工ノイズの2種類があります。人工ノイズはさらにラジオやテレビ放送、携帯電話といった意図的に電磁波を放射しているもの、産業機器や電子機器などから意図せずに発生するものの2種類があります。
電磁波ノイズとしては後者のほうが重要な問題となります。特に産業装置などで使用されるインバータ回路では、高効率化のため高周波化が進み、さらに電磁波ノイズが発生する要因となっており、周辺回路への影響も大きくなっています。

ノイズフィルタの役割/対策事例と対策のポイント

ノイズフィルタの役割

(1) さまざまなノイズ障害の対策・除去
(2) ノイズ法規制(各国、各市場)への適合対策
ノイズは目に見えませんが、電子計測器で電圧として測定できます。空調機ノイズによるAMラジオ障害について、対策前後の状態を電圧波形と周波数解析波形で示すことができます。

ノイズフィルタの基本動作

ノイズフィルタはEMIフィルタ、電源フィルタとも呼ばれるローパスフィルタです。遮断周波数より低い周波数を通し高い周波数は減衰させます。インバータなどから発生する高周波ノイズを除去する効果があります。

一般的なノイズフィルタ回路を図2に示します。コモンモードコイルは負荷電流による磁束を発生させないようにトロイダルコアに巻き線したもので主にコモンモードノイズを抑制します。
CxはXコンデンサまたはアクロスザラインコンデンサと呼ばれ、主にディファレンシャルモードノイズを抑制します。CyはYコンデンサまたはラインバイパスコンデンサと呼ばれ、主にコモンモードノイズを抑制します。

対策事例と対策ポイント

電源端子妨害電圧

ノイズフィルタの選定ポイント

事例1 サーボ・インバータ応用機器(半導体製造装置)
事例2 サーボ・インバータ応用機器(多軸工作機械)

対策のポイント

(1)ノイズフィルタの減衰効果

汎用NF(コイル1段型)フィルタと高減衰HF(コイル2段型)フィルタの電源端子妨害電圧測定での実測例を示します。

(2)アース強化

アースはノイズ対策の基本です。アースインピーダンスが高いと広帯域の周波数に悪影響します。
①アース線は太く、短くが基本です。
② ユニット間や機器間の配線がシールド線を使用している場合、シールド接地は両端を面接地することでアース強化することができます。
③ ノイズフィルタの取り付けパネルの塗装を剥離してからノイズフィルタ底面で接地するようにしてください。

(3)配線ルートの最適化

配線には以下の注意が必要です。
① ノイズフィルタの1次側配線と2次側配線は近接しないよう分離してください。(結束は厳禁です)
② モータ線はシールド線をご使用ください。その際、シールド接地は両端を面接地してください。
③ モータ線はサーボ・インバータ入力線やノイズフィルタ1次・2次配線と近接しないよう分離してください。(結束は厳禁です)

(4)コアによる特性改善

ノイズフィルタ、アース強化および配線の見直しでも特性改善しない場合、コア対策が有効です。
コアは次の方法で取り付けてください。
① フィルタ1次または2次側へ、コアをRST相一括してコモンモードで取り付ける。複数回巻き線してください。
② モータ線がシールドしていない場合はコアをUVW相一括してコモンモードで取り付けてください。
  また、コアは周波数特性がありますので減衰させたい周波数に対応する材質のコアを選定してください。

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