技術情報・導入事例

電気設備の雷保護システム

電気設備の雷保護システム SPM(Surge Protection Measures)

目的:建築物等の内部の電気・電子設備の雷保護

建築物内の電気及び電子システムを雷撃から保護する手順を定めたJIS Z 9290-4:2016【建築物内の電気及び電子システム】は、「雷サージを侵入させないための低減設計」と「侵入した雷サージをSPDにより低減する設計」で構成されます。

電気設備の雷保護システムの選定

電子・電気機器などの電気設備に対して、雷サージによる影響を最小限にする設計であり、SPDを用いた雷サージ低減対策と、耐雷トランスなどによる雷サージの絶縁化対策に分類されます。

ステップ1SPDによる雷サージ低減(等電位化)

SPD選定のポイント①SPD設置場所の設定

被保護設備の選定及び雷保護ゾーン(LPZ)を設定します(設備のある空間をいくつかの雷保護領域に分割する)。

SPD選定のポイント②接地と雷等電位ボンディングの設計

外部LPSとそれ以外の金属部を直接接続または接地間用SPDで間接接続します。

SPD選定のポイント③被保護設備の耐インパルスカテゴリと耐電圧の把握

電源系統の被保護設備のサージに耐えうる電圧の最大値を把握します。

SPD選定のポイント④電源回路に対するSPDの選定

回路方式、定格電圧などを確認します。

SPD選定のポイント⑤信号回線に対するSPDの選定

回路方式、定格電圧、回路電流、伝送周波数を確認します。

ステップ2耐雷トランスなどによる雷サージの絶縁化

電源回路耐雷トランス選定のポイント

回路方式、定格電圧、定格容量を確認します。

通信・信号回線光ファイバーによる絶縁化

光ファイバーを採用することによって、雷サージの侵入を遮断することができますが、光ファイバーケーブルの張力補強のために使用しているテンションメンバにメタル線が使用されていることが多く、サージの影響を受けることがあります。
そのため、メタル線が使用されている場合は、メタル線の室内引込口の固定箇所と内部の電気機器の離隔距離を十分とること(絶縁化)が必要です。

雷保護ゾーン(LPZ)の設定

雷電磁インパルス(LEMP:Lightning Electromagnetic Pulse)によって生じる電磁界により建築物内部の設備や電気電子機器に障害が発生しないように、雷による影響度合いの異なる領域(LPZ:Lightning Protection Zone)を設定します。
雷保護ゾーンを定めることで、誘導雷対策、直撃雷対策が明確化され、SPDの選定が可能になります。そして雷保護ゾーンの境界ごとにSPDなどの保護対策を施すことで、雷サージによる影響を低減します。
実際の建築物における電気系統の配線は、LPZ1は電気室、LPZ2は各分電盤などと分類し、各々にSPDを設置して雷サージを保護可能なレベルまで段階的に低減します。

雷保護ゾーン(LPZ)の設定

雷保護ゾーン(LPZ)の概要

雷保護ゾーン 概要 SPDクラス及びカテゴリ
外部 LPZ0A 直撃雷、全雷電流、全雷電磁界によって危険にさらされるゾーン。 屋外設備にもSPDによる保護をお薦めします。
LPZ0B 直撃雷に対しては保護されているが、部分雷電流、全雷電磁界によって危険にさらされるゾーン。
内部 LPZ1 直撃雷に対しては保護されているが、制限された雷電流又は誘導電流、減衰した雷電磁界にさらされるゾーン。 クラスⅠ、カテゴリD1
LPZ2 直撃雷に対しては保護されているが、誘導電流、LPZ1よりもさらに減衰した雷電磁界にさらされるゾーン。 クラスⅡ、カテゴリC2

接地と雷等電位ボンディング

雷保護の基本は「接地とボンディングによる等電位化」であり、接地とボンディングは非常に重要です。
接地については、建築物全体との等電位化を図るため、構造体利用接地またはB型接地極システム(環状接地極、網状接地極、基礎接地極)とし、各電気設備の接地も統合するのが望まれます。別接地とする場合には、接地間用SPDを用いることで、雷サージ侵入時に等電位化を図ることができます。
建築物内部の電位差発生防止のため、雷保護ゾーン境界でのSPDによるボンディングだけでなく、建築物の鉄骨や鉄筋などを相互接続し、接地極システムとボンディングすることで、ボンディング回路網を構築します。

鉄筋用クランプを用いて、引下げ導線と建築物の鉄筋をボンディング
鉄筋用クランプを用いて、引下げ導線と建築物の鉄筋をボンディング
接地間用SPDを用いて、A種、B種、C種、D種などの接地極をボンディング
接地間用SPDを用いて、A種、B種、C種、D種などの接地極をボンディング

機器のインパルス耐電圧と過電圧カテゴリ

JIS C 60364-4-44では、電源系統におけるインパルス耐電圧を下表のように定めています。過電圧カテゴリはⅠ~Ⅳのカテゴリに分類され、各設置場所に設置される機器は下表に定める必要なインパルス耐電圧より小さくならないように選定する必要があります。
図に示すように各フロアの分電盤は耐インパルスカテゴリⅢ、電気機器の入力部はカテゴリⅡに該当するため、カテゴリⅢの分電盤に取り付けるSPDの電圧防護レベルは、カテゴリⅡのインパルス耐電圧以下とする必要があり、電灯系で1500V以下、動力系で2500V以下とする必要があります。

直撃雷と誘導雷の電流波形の違い

JISにおいては直撃雷の電流波形を10/350μs(代表波形)、誘導雷の電流波形を8/20μsと規定しています。直撃雷波形の方が継続時間が長いため、誘導雷波形とのエネルギー(電荷量)の違いは、電流ピーク値を同じ値とした場合、約25倍以上のエネルギーとなります。

雷保護ゾーン/過電圧カテゴリ別によるSPDの設置

電気機器の雷対策は、雷サージを電気機器に侵入させないことが重要です。
対策方法として、絶縁化・磁気遮へいが行われることがありますが、SPD(避雷器)による等電位化が広く一般的に実施されています。雷保護ゾーン又は過電圧カテゴリの境界ごとにSPDを設置します。

〇雷保護ゾーン別で見た場合、LPZ1は直撃雷の分流の一部が流入する可能性があります。
そのため、LPZ0とLPZ1の境界にはクラスⅠ又はカテゴリD1の直撃雷用SPDを設置します。LPZ2~LPZ4における雷サージの影響はLPZ1にくらべ減衰するため、LPZ1とLPZ2の境界又はLPZ2とLPZ3の境界はクラスⅡ・Ⅲ又はカテゴリC2の誘導雷用SPDを設置します。

〇過電圧カテゴリ別で見た場合、各フロアの分電盤は過電圧カテゴリⅢ、電気機器の入力部はカテゴリⅡに該当するため、カテゴリⅢに取り付けるSPDの電圧防護レベルはカテゴリⅡの耐電圧以下にする必要があります。

SPDの試験規格と設置場所の概要

JIS C 5381シリーズにおいてSPDの試験方法や取り扱いが詳しく規定されています。
実際の設計に当たっては、電源系では「回路電圧」「系統の種類」「DC・AC」、通信及び信号回線では「使用電圧」「周波数」「配線数」などを確認した上で最適なSPDを選定する必要があります。

使用用途 JIS試験規格 設置箇所、設置目的等
電源用 直撃雷用
クラスⅠ
電流波形:10/350μs
電力引込口等に設置し、建物外へ流出又は建物外から流入する直撃雷電流に対応
誘導雷用
クラスⅡ
電流波形:8/20μs
建物内部の分電盤等に設置し、建物内部に侵入又は発生する誘導雷電流に対応
クラスⅢ
電圧波形:1.2/50μs
電流波形:8/20μs
建物内の機器近傍に設置し、建物内部に侵入又は発生する誘導雷電流から機器を保護
通信用
信号用
直撃雷用
カテゴリ D1
電流波形:10/350μs
信号線の引込口等に設置し、建物外へ流出又は建物外から流入する直撃雷電流に対応
誘導雷用
カテゴリ C2
電圧波形:1.2/50μs
電流波形:8/20μs
建物内の機器近傍に設置し、建物内部に侵入又は発生する誘導雷電流から機器を保護