技術情報・導入事例

  • 低圧設備の耐雷対策 – 雷サージの侵入経路
  • 低圧設備の耐雷対策 – 雷サージ対策
  • 高圧設備の耐雷対策

低圧設備の耐雷対策 – 雷サージの侵入経路

雷サージの侵入経路

低電圧機器に雷サージが侵入する経路としては、図6のとおり次の4方向と、これらの複合経路と合わせ、計5通りの侵入経路が考えられます。

図6 雷サージの侵入経路
図6 雷サージの侵入経路

入力電源から侵入してくる雷サージ

高圧配電線に直撃または誘導された雷サージが柱上変圧器から低圧側に侵入する場合や、近傍落雷によって低圧配電線に誘導される場合、また、引込口附近に設置されている高圧アレスタの動作による大地上昇電位がB 種接地側から低圧配電線に侵入する等の場合に、接続されている低電圧機器を破壊します。

信号、計測、制御線から侵入してくる雷サージ

外部から引き込んでいる信号、計測、制御線の近傍で雷放電があると、これに雷サージが誘導されます。また、屋外設置のセンサーや制御機器が雷撃を受けると、非常に大きな雷サージが信号線を伝わって低圧制御回路に飛び込み、低電圧機器を破壊します。

雷(直撃雷、誘導雷)

建物の屋上にある避雷針、その他に襲雷があった時、雷サージ波頭部の進行に伴い高電位が進行波になって伝達されるので、僅かな時間であるが各階の間では大きな電位差が生じ、低電圧機器を破壊します。また、隣接する建物の避雷針への落雷やその他の近傍落雷があった時、建物自身に誘導雷サージが発生し、これが配線にも誘導され、低電圧機器を破壊します。

大地から侵入してくる雷サージ

建物に落雷したり、避雷針に大きな雷電流が流れて大地の電位が上昇すると、機器の電源電圧や信号電圧より大地の電位の方が高くなり、機器の接地線を伝わって、雷サージが低電圧機器の電源や信号線に侵入し、破壊します。遠方に落雷した場合でも、地表面を雷電流が流れますので、同様に機器の接地を伝わって雷サージが侵入します。

雷サージの大きさ

低圧配電線路(100Vあるいは200V)で、昭和56 〜 62年の毎年7 〜 10月の襲雷期にサージカウンタ(雷電圧の動作電圧を定めて、その電圧範囲で動作回数を表示する装置)を用いて低圧配電線路の誘導雷電圧を実測したもので、その結果を図7に示します。
(今井他、「No.1221低圧配電線に発生する雷過電圧の観測」平成元年電気学会全国大会より)線路−大地間で10kV以上の雷過電圧の発生が10%あります。低電圧機器の雷サージ耐電圧は0.6 〜 7kV程度、半導体回路そのものでは数10Vしか無く、雷サージは低電圧機器にとって非常に脅威です。

図7 低圧配電線路の誘導電圧観測結果
図7 低圧配電線路の誘導電圧観測結果

低電圧設備の耐雷対策 – 雷サージ対策

雷サージ対策

雷サージ対策方法

雷サージは直撃雷サージと誘導雷サージに分けられます。直撃雷サージとは建造物等に直接雷撃するサージをいい、誘導雷サージとは雷撃点周辺の電磁界が急変することによって、配電線等が誘導を受けて発生するサージをいいます。
直撃雷サージのエネルギーは非常に大きく、アレスタだけで全てのエネルギーを処理することはできません。よって、直撃雷を受けた建物内の機器を安全に保護するためには、建物全体に耐雷対策を施しサージエネルギーの多くを大地へ流した上で、残りの直撃雷サージ分流成分および雷撃によって発生した誘導雷サージをアレスタや耐雷トランスで処理する必要があります。
以下に、雷サージの対策手法として、①アレスタによる対策、②耐雷トランスによる対策について示します。

①アレスタ(SPD)とは

雷の誘導や回路の故障等によって一定以上の大きな電圧が生じた場合、これらの過電圧を有効に大地に放電し、電気施設の絶縁を保護すると共に、放電現象が実質的に終了した後も引き続いて電力系統から供給され、アレスタを流れる商用電流を短時間のうちに遮断して、系統の正常な状態を乱す事なく現状に自復する機能(続流遮断機能)をもった装置です。
続流遮断機能を持たせるためアレスタが動作した時、アレスタの両端子には流れた電流に応じた制限電圧が発生します。そのため、この制限電圧を保護しようとする機器の耐電圧より低く選定することが必要です。
アレスタの動作を簡単に説明すると、図8の様になり、使用電圧より少し高い位置に動作開始電圧(V1mA)があり、この電圧を越えたサージ部分を大地に流す働きをし、この時電流の大きさに応じて制限電圧が発生します。アレスタは、雷サージを流す働きを持つので、流す事のできる最大電流(放電耐量)と、通常に流れた時の制限電圧が性能チェックポイントになります。AC200V回路で使用するアレスタに2500Aの雷サージを流した時の制限電圧を、図9に示します。

図8 アレスタの動作
図8 アレスタの動作
図9 アレスタの制限電圧
図9 アレスタの制限電圧

②耐雷トランスとは

絶縁トランスを主体とし、これにアレスタ及びコンデンサを付加し、雷サージが侵入した場合、内部に組み込まれたアレスタでの抑制、1次側と2次側の高絶縁化、およびシールドにより、雷サージの流れを完全に遮断できる様にした装置です。
アレスタの様に制限電圧が発生する事も無く、1次側から侵入した雷サージを、2次側では、1/1000以下に減衰させる事ができ、アレスタに比べ、大きな効果が得られます。
当社製の耐雷トランス〔商品名:サージシェルタ〕の動作を説明すると、図10の様になり、1次側からサージが侵入してくると、1次側に取り付けられているアレスタが前述の動作をし、サージ成分を大地に流します。この時、電流の大きさに応じた制限電圧が発生しますが、この制限電圧は3層シールドにより大きく減衰され、2次側には1/1000の値となります。2次側の線間にはコンデンサが取り付けられており、ノイズも吸収する機能を持っています。
コンピュータやマイコン等、LSI、ICを使用した製品は、特に耐電圧が低い機器であるため、他の機器より壊れやすく、アレスタでは無く、耐雷トランスにより高絶縁化し、雷サージの侵入を阻止する事により、被害を確実に防止する事ができます。
サージシェルタを用いると、1次、2次間の絶縁が30kVと高く、この部分の絶縁により、この先に雷サージが流れず、従って機器にまで侵入しないため、機器が壊れるのを防ぎます。また、1次側から2次側への移行電圧を、1/1000以下に減衰させますので、30kVが侵入してきても、2次側には30Vとなり、アレスタで保護しきれない装置の保護が可能です。

図10 耐雷トランスの動作
図10 耐雷トランスの動作

アレスタ(SPD)、耐雷トランスの設置箇所

雷サージのエネルギーは様々であり、高圧側、低圧側のアレスタ1ヶ所で保護する事は困難です。アレスタ、耐雷トランスを多段に取り付ける事により、雷サージエネルギーと過電圧とを逐次減少させて行き、使用している電圧に対応した絶縁レベル以下にまで減少させ、機器被害を生じさせない様にします。できれば更にノイズレベルにまで減少させる事が望まれます。
ここで、使用する各電圧に対応したアレスタ及び耐雷トランスを選定することが重要になり、選定を間違うと効果が無く、雷サージにより機器やアレスタ等が壊れるおそれがあります。
低圧機器の雷サージ耐電圧が規格で決められているものを表1に示します。国内では、規格で定められているのは少ない状況にあります。この雷サージ耐電圧が不明の場合は、製造メーカに確認する事になりますが、AC耐電圧が判れば、雷インパルス耐電圧は、一般にはその値の2倍以上あるというおよその推定ができます。
高圧6kV配電線の引込柱から、1次、2次までの間のアレスタ取り付けを図11、分電盤から保護する機器までの取り付けを図12に示します。

図11 1次、2次までの間のアレスタの取り付け
図11 1次、2次までの間のアレスタの取り付け
図12 分電盤から保護する機器までの取り付け
図12 分電盤から保護する機器までの取り付け

表1 国内における各種電気製品の雷サージ試験規格

機器名 規格名称 試験方法 規格値
波形 電圧 回数
配線用遮断器

(JIS C 8201-2-1:2011)

漏電遮断機

(JIS C 8201-2-2:2011)

付属書1

JIS C 60364対応型

1.2/50㎲ 0.33〜12kV

(9ランク)

1秒間隔

正負各5回

定格インパルス耐電圧において放電破壊が無いこと
付属書2

在来電気設備対応型

1.2/50㎲ 0.33〜12kV

(9ランク)

1秒間隔

正負各5回

定格インパルス耐電圧の値を宣言した場合放電破壊が無いこと
1.2/50㎲ 5.0kV 1秒間隔

正負各3回

定格インパルス耐電圧の値を宣言しない場合絶縁破壊またはフラッシオーバーが無いこと
電力機器 JEC-210 1.2/50㎲ 3〜7kV 1分間隔

正負各3回(100〜20Ω接続)

異常が無いこと
ガス燃焼機器 JIS S 2093-01:2010 1.2/50㎲ 電源線間 5kV

電源−ケース間 10kV

正負各3回(100Ω接続) 使用上支障の無いこと
電力量計 JIS C 1211-1:2009 1.2/50㎲ 6kV 各素子1回(+極性のみ) 異常が無いこと
配線器具 JIS C 1216-1:2009 1.2/50㎲ 5.0kV及び6kV 各素子1回(+極性のみ) 異常が無いこと
電気用品安全性 1.2/50㎲ 1kV 正負各1回(100Ω接続) 異常が無いこと
オーディオビデオ機器 JIS C 6065:2007 1㎋のコンデンサに10㎸充電 毎分12回の割合で50回 アンテナと電源間の絶縁が低下しないこと
太陽電池モジュール

安全適合性確認試験

JIS C 8992-2:2010 1.2/50㎲ 0.8,1.5,2.5,4.0

6.0,8.0㎸

正負各3回 システム電圧100V〜1000V及び適用等級(AまたはB)による絶縁破壊または表面トラッキングが無いこと
太陽電池アレイ通則 JIS C 8951:2010 1.2/50㎲ 4500V 正負各3回

出力端子一括と大地間

30V〜750Vまでのパネルに適用試験に耐えること
小出力太陽光発電用PC JIS C 8980:2009 1.2/50㎲ 5.0kV 正負各3回

主回路一括対地間

定格出力:10W以上、20kW未満異常が無いこと

アレスタ(SPD)、耐雷トランスの設置方法

①アレスタ(SPD)

図13aの様に電源線、信号線にそれぞれアレスタを取り付け、単独に接地を取った場合、AC100Vから、1000Aの雷サージが侵入したとします。アレスタが動作し、電源線から大地に雷サージを流しますが、アレスタに1000A流れた時に発生する制限電圧450Vと、接地抵抗30Ωに流れた時の電圧30kV(30Ω×1000A)の合計30.45kVが、信号回路及びケース間に加わります。この電圧では、信号回路及びケース間の絶縁は破壊され、基板上を雷サージが放電しケース、接地線、又は信号回路から信号線へと雷サージが流れるため機器は破損します。

図13a
図13a

図13bの様に、各接地線を1点接地とした場合、同じくAC100V電源から1000Aの雷サージが侵入したとします。アレスタが動作し、電源線から大地に雷サージを流します。

図13b
図13b

このようにすると機器は30kVの高電位になりますが、アレスタに1000A流れた時に発生する電圧450Vのみが、信号回路及びケース間に加わる事になり、この程度の電圧では充分絶縁を維持できますので、基板上を雷サージが放電し接地線、信号線へと雷サージが流れる事無く、機器は保護ができる様になります。
この様に、アレスタによる同電位化が図れる様に取り付けます。連接1 点接地にする事により接地抵抗は多少高くても(100Ω以下)効果があります。

②耐雷トランス(サージシェルタ)

図14の様にシステム(機器)のケースと電源配線の金属シールド及びサージシェルタの出力巻線をシールドしているEs接地を接続する事により、システム全体を金属体で包んだ様な極小容積の静電シールドの空間を構成し、接地の位置をシステムの設置位置とします。(これをサージシェルタの局部同電位化による保護と称しています)
この様にすれば、この局部同電位化された極小容積の内部の電源線、信号線及び接地線を通じて侵入する雷サージを遮断する事ができ、内部のシステムは雷サージの影響から守られる事になります。
サージシェルタは、接地線から侵入し、電源側または負荷側に抜けていこうとする雷サージに対しても、シールド板3枚構造により遮断できます。

図14
図14

アレスタ(SPD)の種類と選定方法

①アレスタ(SPD)の種類

電源、信号の種類に応じて、多数のアレスタがあります。電源用は現在、主成分の酸化亜鉛(ZnO)に複数の金属酸化物を添加し、高温で焼結したセラミックスが主流になっています。それまで使用されていた炭化ケイ素(SiC)を主成分とした焼結体に比べ、雷サージ処理能力が大きく、続流が流れません。また、任意の動作開始電圧のものが製作できる、大きな雷サージが流れた時の制限電圧が低い、漏れ電流が極めて小さい等の多くの特長を持っています。
信号用は電源用と違い、信号回路や機器は一般に耐電圧が低いため、回路に対して直列に取り付けるタイプが主流となっています。信号用は、通常、複数のサージ対策部品と抵抗、インダクタンスが組み合わされた構造になっており、アレスタを信号線に取り付ける時は、アレスタに信号を通す様に直列に接続されるため、線路抵抗にこのアレスタ内の抵抗をプラスする必要がある点と、負荷電流の制約を受けます。アレスタ内の抵抗と、負荷電流(定格電流)は、アレスタカタログに記載されています。○○信号用という、その信号回路用のものを使用すれば、この確認が終了しているので注意する必要はありません。
下記の様なアレスタの種類があります。

  1. 電源保護用(AC、DC電源)
  2. 信号回線保護用
  3. 電話回線保護用(アナログ、ISDN回線)
  4. 通信回線
  5. CATV保護用
  6. ITV保護用
  7. ネットワーク保護用

②選定方法

アレスタ(SPD)の種類の特定

前記調査後、カタログより機種を選定します。選定する場合の重要な項目は下記の通りです。

①1000A時の制限電圧を調べ、この電圧が保護する機器の雷サージ耐電圧以下であるものを選定します。
この1000Aの根拠として、低圧配電線に発生した雷サージ電流の、公表された観測結果が無いため、9電力会社の6.6kV実系統に於ける配電用アレスタの放電電流の調査結果(財団法人電力中央研究所発行、配電線耐雷設計ガイドブック)を参考にしました。この中に1000A以下が約95%との報告より、低圧配電線に対しても同程度あるとして1000Aを誘導雷レベルの値として選定し、この電流がアレスタに流れた時の制限電圧を1つの判定基準としました。
例えば、AC100V電源保護用のアレスタ(音羽製品としてGL-L1F)の1000A時の制限電圧は、490V以下、DC24V信号回路用アレスタの1000A時の制限電圧は、40V以下です。②保護する機器に侵入してくる、雷サージの大きさを想定し、至近雷を含む放電耐量値を選定します。
〔放電耐量:8/20μs波形の雷インパルス電流を5分間隔2回流した時、動作開始電圧の変化率が±10%以内となる最大電流値〕各設備環境毎に推奨される放電耐量値の大きさは下記の通りです。(過去の実績より、放電耐量値を選定)

  1. 屋外から、架空・埋設で引き込まれた線路に直接接続された機器(電源回路・信号回路・電話線等の区別は無い)10kA(8/20μs)
  2. 水処理設備に取り付けられた機器10kA(8/20μs)
  3. 避雷針の避雷導体として使用されている鉄骨に平行して配線された機器5kA(8/20μs)
  4. 外線に接続されていない機器で建物内配線されているもの(インターホン、放送)2kA(8/20μs)

耐雷トランスの種類と選定方法

①種類

AC電源用として、各種のものがあります。雷サージとノイズ両方に効果のあるものが主流ですが、ノイズ減衰を主目的として作られているもの(ノイズ対策用)もあり、選定時に注意が必要です。

②選定方法

(a)下記項目を確認します。
  1. 使用場所(屋外、屋内、装置内)
  2. 使用電圧(1次、2次電圧)の確認
  3. 相数の区別(単相、三相、単三)
  4. 負荷容量(トランス容量)の確認
(b)種類の特定

下記の項目について、性能比較を行い機種を選定します。

  1. 1次、2次間の遮蔽板数この枚数が多い程、雷サージに対する抑制効果も高くなるので、多い物を選定
  2. サージ減衰量1/1000以上
  3. 雷インパルス絶縁強度30kV以上が望ましい
  4. 電圧変動率少ないもの
  5. 効率高いもの

高電圧設備の耐雷対策

高圧自家用電気工作物の雷被害

高圧自家用電気工作物(高圧受電設備)としては、通常電力会社設備との責任分界点となる構内の1号柱に設置されるPAS(柱上気中負荷開閉器)から、架空線やケーブル等の引き込み線(構内配電線を有する場合もある)、遮断器設備と変圧器設備、分電設備が主な構成と考えられます。
これらの設備故障の主な発生原因は雷害であり、一般的にPASやケーブルの引き込み口の被害が一番多く、つづいて受電設備側のCB、VT、CT類、そして変圧器等が全国的な被害順序であると言われています。
PAS被害が多い事については電力会社設備との分界点として、電力会社の配電線路の延長上にあり、誘導雷サージを受ける環境としては、屋外の電力会社設備と同様に過酷なためと言えます。従って、自家用設備による波及事故防止対策は、このPAS保護が最重要であり、構内第1号柱設備のPASには同柱にアレスタを設置し、直近で保護する事が重要です。

高圧アレスタについて

アレスタの役割と機能

配電線や高圧受電設備では、その系統電圧に応じ雷インパルス電圧や交流電圧に対する基準的な絶縁強度のレベルが定められています。各電気設備は、使用回路電圧に十分な耐力を持つと同時に、この基準の絶縁強度に耐える絶縁設計が施されています。実系統に於いては、これ等機器の絶縁強度を脅かす高い雷サージや回路の開閉に起因する異常な過電圧が発生し、絶縁破壊による系統事故を引き起こす事があります。
アレスタは、これらの異常な過電圧をその保護レベルに制限して、機器の絶縁破壊を防止し、機器の基準絶縁強度との協調を保つ事を役割としています。そのために、異常な過電圧を大地に放電して機器に加えられる過電圧を低減する事と、その時に系統電源より流入しようとする続流を遮断して、元の正常な系統状態に自復する機能を持っています。
図15は、配電用機材の絶縁強度とアレスタの保護レベルを示した例です。

図15 6.6kV配電用機材の雷インパルス耐電圧とアレスタ放電開始電圧(出典:電気共同研究 第40巻 第6号)
図15 6.6kV配電用機材の雷インパルス耐電圧とアレスタ放電開始電圧(出典:電気共同研究 第40巻 第6号)

表2 アレスタの種類

分類方法 種類
方式(原理)による

直列ギャップ付き避雷器

  • 〔直列ギャップ+炭化硅素抵抗体(SiC)〕
  • 〔   〃   +酸化亜鉛抵抗体(ZnO)〕
酸化亜鉛形避雷器〔酸化亜鉛(ZnO)抵抗体を用いた避雷器〕
定格処理責務による 公称放電電流 10kA…発変電用避雷器
2.5kA…配電用避雷器
開閉サージ処理責務 25μF…6.6~154kV系統用
50μF…154~275kV系統用
78μF…500kV系統用
構造による 碍子形 標準形
耐汚損形(含む、活線洗浄形)
タンク形(GIS用) 単相形
三相一括形
適用回路による 発変電用(含む、中性点用)
配電用
回転機用
直流送電用/送電線用
直流車両用
交流車両用

アレスタの種類

現在では殆どが酸化亜鉛(ZnO)素子を特性要素とするアレスタが生産されています。この酸化亜鉛形アレスタは、方式、定格処理責務、構造、適用回路によっても分類され、表2に示す通り多数の種類があります。さらに系統電圧別に、適用される定格電圧が設定されます。6kV系統用については、直列ギャップ付きと、ギャップレスアレスタがあり、代表的な構造比較例を図16に示します。

図16 6kV系統用の配電用アレスタの代表的な構造例
図16 6kV系統用の配電用アレスタの代表的な構造例

アレスタの効果

アレスタは所定の電圧以上の雷サージ過電圧が加わると動作し、そのサージ電流を大地に放流して設置点前後の線路電圧を抑制して機器の絶縁破壊事故を防止するものです。

(a)中間柱に設置のアレスタ

図17に示す様に線路の中間にアレスタが設置されている場合を考えます。線路に雷サージ電圧Uが加わると、アレスタの放電電流Iarは次式で表されます。

Iar

U − EarZ/2 + R

ここで、Ear:アレスタの制限電圧

  • Z:線路のサージインピーダンス
  • R:アレスタの接地抵抗値

です。又、アレスタ放電後のアレスタ設置点の電圧U’はIarを用いて、

U’= Ear + R・Iar

で表されます。
Ear = 20kV、Z = 400Ω、R = 30Ω、U = 250kVとすると、Iar = 1000A、U’= 50kVとなり、アレスタ設置点での電圧は250kVが50kVに抑制されます。

(b)末端柱に設置のアレスタ

線路に誘導されたサージ電圧が伝搬し末端の開放点に達すると、電圧サージは線路のサージインピーダンス(約400 〜 500Ω)が、ほぼ無限大のサージインピーダンスに急激に変化するため正の反射を生じ、元のサージ電圧の2倍に上昇します。
高圧需要家の受電用変圧器の一次側は、この末端柱と同様な条件にあると言えます。このため、線路の中間点に対し、末端では同一の雷撃電流によって発生する誘導電圧以上の電圧が加えられる事を考慮しておく必要があります。又、アレスタの放電電流に於いても、(a)項の線路中間柱と比較して末端柱ではアレスタ放電電流が増加となり、末端のアレスタの方が苛酷になります。

図17 アレスタの効果
図17 アレスタの効果

アレスタの施設方法

電力各社の配電線では誘導雷サージを対象として、被保護機器が保護距離内に入るようにアレスタの平均施設間隔を200m以下としています。柱上変圧器、開閉器等の重要な機器の保護、さらに架空線とケーブルの接続点、線路の末端、屈曲点、分岐点等では、雷サージ過電圧が反射等により大きくなると考えられ、その有効保護距離を50m 以内となる様にアレスタを設置すべきです。
他に耐雷素子と呼称される酸化亜鉛形の避雷素子を内蔵して開閉器や変圧器を保護する事があります。

①高圧受電設備の保護

(a)電気設備技術基準の解釈(第37条)では、受電電力の容量500kW未満の場合にはアレスタ設置の義務付けをしていませんが、雷サージの侵入はその容量に関係無く発生するものであり、架空電線路から供給を受ける需要家の引き込み口と、これに近接する箇所にアレスタを設置することがより効果的です。
図18に引き込み結線例を示します。
構内配電線を有する場合は、100 〜 500mの間隔内でアレスタを設置し、さらに主遮断器、変圧器等の重要設備(キュービクルや受電設備室)にもアレスタを設置して、屋内の低圧系に到達するまでのサージ過電圧を数段階に亘って低減する保護方法(多段設置による防護)が推奨されます。

図18 引き込み結線例(構内第1号柱を経て引き込む場合)
図18 引き込み結線例(構内第1号柱を経て引き込む場合)

(b)アレスタは、それによって保護される機器の最も近い位置に設置する事が重要です。自家用設備による波及事故防止対策は、PAS保護が最重要であり、構内第1号柱設備のPASには同柱にアレスタを設置し、直近で保護します。
地絡継電装置付き高圧交流負荷開閉器(SOG付PAS)にあっては、低圧制御系電源に耐雷対策が施されていない場合、それへの波及を考慮し機器の接地点とアレスタの接地点は2 〜 3m離す必要があります。

(c)引き込みケーブルの有無にかかわらず、引き込み口にはアレスタを設置する事が望ましい。

(d)アレスタによる保護を確実にするためには、図19に示す様な被保護機器とアレスタ接地の連接が効果的となります。但し接地抵抗が大きい場合、接地電位上昇が低圧側へ侵入して、機器(低圧系)の絶縁が破壊してしまう事のない様に注意する必要があり、接地抵抗の低減(2 〜 3Ω等)や、低圧系への耐雷対策も併せて実施する事で、より信頼性を高める事が可能になります。

図19 アレスタ接地と機器(B種等)接地の連接
図19 アレスタ接地と機器(B種等)接地の連接

②多雷地域における保護

雷の多い地域では発生頻度だけで無く、近傍雷の発生する機会も多く、過酷な雷サージ過電圧の発生が見込まれます。このために被保護機器にできるだけ近接して設置し、接地抵抗を低くする事が望まれます。前述のように接地抵抗が2 〜 3Ω程度得られる様であれば、機器とアレスタの接地を共用する事により、より一層の耐雷効果を得る事が可能です。又、雷電流の処理性能の大きな5kA、10kA用アレスタを使用する事も推奨されます。

アレスタの接地

電気設備技術基準の改定により、従来の接地工事の種別は第1種、第2種、第3種及び特別第3種から、A、B、D及びC種に変更されました。そして技術的内容を具体的に示した「電気設備技術基準の解釈」が制定され、それに基いて各種機器の接地が施されています。
機器の接地は、その性格上からほとんどが感電防止等の保安用であると言えます。それに対し、アレスタの接地は雷サージ電流を大地に流し、それによる過電圧を低減する事を目的としています。
高圧アレスタでは、電気設備技術基準の解釈(第37条)により、A種接地工事(10Ω)を施す事になっています。但し、架空電線路(配電線路)では変圧器のB種接地工事から1m以上離隔した時は、30Ω以下にすれば良いとなっています。接地抵抗が高い場合、線路と大地間に発生する電圧は、アレスタの制限電圧と放電電流による接地抵抗の電位上昇の和になる事から、アレスタによる保護効果が減少します。一層の保護効果を上げる為には、10Ω以下のできるだけ低い接地抵抗とする事が必要です。アレスタは一般には単独接地を施しますが、特に単独接地しなければならないとの規定は無い為、接地網を共通の接地極としているような設備(建家内)等では、遠方に引いて単独接地するよりも、連接して接地線を出来るだけ短くする方がアレスタの保護効果は高まります。これは機器の線路側端子とケース接地端子間に、アレスタがより近接して設置され、接地抵抗電位が機器に加えられない事による効果を意味しています。(同電位化)