技術情報・導入事例

雷放電現象

雷放電現象

激しい雨や雷、雪を伴う積乱雲は、雲の内部であられ※1や雹(ひょう)※2 が衝突することにより正電荷・負電荷が分離する作用があります。雷を伴う積乱雲(雷雲)は、電荷分離が特に強いため大気の絶縁が破壊され、雲内や地表とのあいだで放電が起こります。これが雷です。
積乱雲内部の帯電メカニズムは厳密にはまだ解明されていません。最も有力な説は、あられと氷晶※3の衝突によりあられと氷晶がそれぞれ異なる極性に帯電するというものです。-10℃を境に、あられは負に、氷晶は正に帯電します。軽い氷晶は上昇気流により上方に位置し、重いあられは下方に位置するため、雲内に正・負の電荷が溜まると考えられます。地表では雲底の電荷に対応した反対極性の電荷が静電誘導作用によって集まり、蓄積されるにつれ、雲と大地間の電圧が高まります。最終的には大気の絶縁を破壊し電気的に結びつくことで対地放電(落雷)し、電荷が中和されます。これが落雷の主放電です。

絶縁破壊
導体と導体のあいだ(ここでは雷雲と大地)を隔離している絶縁体(ここでは空気)が破壊され、絶縁状態が保てなくなり、電流が流れること。
電  荷
電気のことを物理的、あるいは微視的に言うとき、電荷と呼ぶ。
  1. あられ雲からから降る直5mm未満の氷の粒。
  2. 雹(ひょう)積乱雲から降る直径5mm以上の氷塊。
  3. 氷晶数μmから100μm程度の小さな氷の結晶のこと。氷晶が大きく成長した場合、あられや雹などになる。

基礎データ

放電時間
約0.001秒~1秒
周辺の温度
約3万℃
放電の全長
数km
世界中で観測される雷の数
毎秒50回
電圧
約1億V
電流
3000A~20万A

図1 対地放雷(落雷)の様子

夏季雷と冬季雷

雷は季節性や電気的性質の違いから、夏季雷と冬季雷の2つに大別されます。
夏季雷は、夏の太平洋高気圧に覆われた気団の中で、日射に伴う熱と上空の寒気によって大気が不安定になり発生します。一方、冬季雷は、シベリア気団の強い寒気の吹き出しに伴い、寒気が相対的に温かい日本海上を通過することで大気が不安定になり発生し、特に、東北から北陸地方にかけての日本海沿岸部で多発します。
図1は、夏季雷と冬季雷を模式的に示したものです。夏季雷と冬季雷ともに基本的には上部に正電荷分布領域、下部に負電荷分布領域をもつ構造になっています。冬季雷の負電荷や雷雲下部の正電荷は短時間(数分から10数分程度)で消滅するため、短命な電荷分布を(+)、(-)で示します。夏季雷は冬季雷に比べ、雲底と雲頂の高度が高く、雲内の電荷分布領域は地表から約5km以上の高度に分布しており、落雷回数が多いことが特徴です。一方、冬季雷は夏季雷に比べ、雲底と雲頂の高度が低く、雲内の電荷分布領域は地表から約2km以上に分布します。落雷回数は少ないですが、1回の落雷の中和電荷量(落雷のエネルギー)が夏季雷の数10倍から100倍程度大きい場合が多いことが特徴です。

図2 夏季雷と冬季雷の模式図
図2 夏季雷と冬季雷の模式図

落雷の種類

落雷は極性と放電の進展方向の違いにより、図3に示すように4種類に分類されます。落雷時に雲内の正電荷が中和される場合は正極性落雷、負電荷が中和される場合は負極性落雷と呼びます。落雷の主放電(激しい発光)に先行するリーダの進展方向が地上から雷雲に向かう場合を上向き、雷雲から地上に向かう場合を下向きと呼びます。夏季雷の落雷の90%以上は、下向き負極性落雷(a)で、落雷の放電路の枝分れが下向きに広がり、夏季によく目にする落雷がこの現象です。一方、冬季雷は、正極性落雷(b)、(d)が約半数を占めます。これは、夏季雷に比べ、雲内の上昇気流が弱いため、雷雲内の下層の負電荷や正電荷が雨や雪と共に落下し、上層の正電荷が残るため、正極性の落雷が多くなると考えられています。また、雲底が地表に近いため、高構造物から上向き落雷(c)、(d)の発生頻度が高いことが特徴です。

図3 落雷の種類
図3 落雷の種類

落雷の過程

ここでは、よく見られる下向きの負極性落雷の多重雷の仕組みの一例を紹介します。

  1. ステップトリーダは50m 程度伸展すると30 ~ 90 マイクロ秒(1 マイクロ秒= 0.000001 秒)休止して、また伸展し休止するという動きを繰り返しながら次第に大地に接近していきます。その平均伸展速度は秒速150km 程度であり、雷雲の高さが地上から約3000m とすると、ステップトリーダが大地に接近するのに0.02 秒程度かかることとなります。
  2. ステップトリーダの先端が大地に接近すると、地上から上向きのお迎え放電が複数発生し、そのうち一つがステップトリーダとつながることで、雷放電路が形成されます。
  3. 形成された雷放電路を通って、リターンストローク(帰還雷撃)が雷雲に向かって発生します。リターンストロークの時間は数十~数百マイクロ秒とみられており、平均伸展速度は秒速10 万km と、光の1/3 の速さで進みます。これによってステップトリーダ上の電荷、および雷雲の電荷の一部が中和されます。以上が一連の雷放電現象です。
  4. 1 回の雷放電では雷雲の電荷がすべて中和できないことが多く、帰還雷撃の数十マイクロ秒後、引き続いて同じ経路を雷雲から大地に向けて第2 の先行放電(ダートリーダ:2回目以降はすべてダートリーダと呼ぶ)が伸展します。ダートリーダは、ステップトリーダのような休止期間がなく、連続的な放電であるため、ダートリーダの伸展速度はステップトリーダの数十倍の速さとなります。
  5. ダートリーダが地上に達すると、第2の帰還雷撃(後続帰還雷撃)が伸展します。通常の落雷では複数の後続帰還雷撃を伴うことが多く、これを多重雷といいます。多重雷は60 ~ 70%の頻度で発生します。約半数の落雷で帰還雷撃に引き続いて放電路に数百アンペア程度の電流が、0.001秒から1秒前後流れ、これを連続電流と呼びます。この中和電荷量は 数C(クーロン:電荷量)から数100C に及び、帰還雷撃の中和電荷量より大きく、落雷時の破壊力も大きくなります。
クーロン
電荷量のことで、電気量の単位。1 アンペアの電流が1 秒間に運ばれる電荷量が1 クーロン。
図4 落雷の過程(例)
図4 落雷の過程(例)

雷の種類と特性

夏の代表的な雷 – 熱雷(ねつらい)

夏の夕立のほとんどが「熱雷」によるものです。太陽の強い日射によって、地表は熱せられ上昇気流が発生し、大気は不安定になって積乱雲(入道雲)が発生します。熱雷はこの積乱雲によって発生します。

夏の代表的な雷 - 熱雷(ねつらい)

季節の変わり目の雷 – 界雷(かいらい)

「界雷」とは、季節の変わり目などによく発生します。温暖な気団と寒冷な気団、この2種類の異なった気団が接するとすぐには混じり合わないで、寒冷前線・温暖前線となります。界雷はこの2つの前線付近で雷雲が形成されて発生します。

季節の変わり目の雷 - 界雷(かいらい)

低気圧や台風による雷 – 渦雷(うずらい)

「渦雷」は発達した低気圧や台風の中心付近などで、周囲から吹き込む気流によって上昇気流が通常より盛んになると発生します。気温が高い時は勢力を長時間持続し、移動速度が速いため広範囲に影響を及ぼします。

低気圧や台風による雷 - 渦雷(うずらい)

雷の特性比較

  夏季雷 冬季雷 誘導雷
雷雲の電圧※1 数千万~数億V 数千万~数億V
雷雲の高さ(雲底) 1200~2000m 300m~
雷雲の高さ(背丈) 7000~16000m 4000~7000m
落雷電流(波高値) 数千A~300kA 数千A~300kA
継続時間(波頭長) 1~数十μs 1~数十μs 1~数十μs
継続時間(波尾長) 数十~数百μs 時には数十ms超えるものあり 数~数十μs
配電線に誘起される電圧(波高値) 最大 数百kV※2
エネルギー 大きい 極めて大きなものあり(夏季雷の数百倍) 小さい

電気設備学会:雷と高度情報社会(1999) より

  • 雷雲の電圧は推定値
  • 6kV配電線に取付けられたアレスタに流れる電流の90%以上は2000A以下