技術情報・導入事例

  • 雷サージとは
  • 避雷器(SPD)と避雷針の違い
  • 酸化亜鉛素子とは
  • 雷放電現象

雷サージとは

雷サージの発生の仕組み

雷サージとは雷によって発生し、電源線、通信線、電気・電子機器に直接又は間接的に加わる短時間で一時的に発生する異常な過電圧及び/又は過電流のことをいいます。雷の電流は非常に大きいため、雷放電路を流れる電流により、配電線や通信線近傍の電磁界が急変し電線や金属部分に抵抗性結合及び誘導結合(電磁的、静電的)による過電圧が発生します。発生した過電圧が電源線や通信線を通って電気機器に侵入し、被害が生じます。その雷サージの影響範囲は落雷地点から数km 先にまで及ぶとされ、すぐ近くの落雷ではなくても被害を受ける可能性も十分に考えられます。

雷サージの発生の仕組み

雷サージの種類

雷サージの発生要因として以下のものがあげられます。

直撃雷

建築物の避雷針やアンテナ、送配電線、通信線などに雷撃が発生する現象。

直撃雷

誘導雷

直接の雷撃ではなく、近傍の樹木や建物に落雷によって、雷放電路に流れる電流による静電的・電磁的結合により、導体(送配電線、通信線など)に雷サージ(過電圧、過電流)が発生する現象。

誘導雷

逆流雷

構造物等への落雷による接地電位上昇によって、引き込まれている導体(送配電線、通信線など)に落雷電流の一部が流出する現象。

逆流雷

雷サージによる被害例

雷サージによって、電気機器は絶縁破壊や誤動作、劣化などの影響を受けます。特に近年は電子機器の高集積化により、機器が過電圧に対して脆弱になっており、以前に比べて低いレベルの過電圧でも被害が発生する場合があります。写真に示すような集積回路の内部が破損するなどの外見上一般故障と区別できない被害も多く見られます。

通信ケーブルの焼損例

通信ケーブルの焼損例

基盤の焼損例

基盤の焼損例

サージとノイズの違い

サージ

サージは、電気回路や電気系統に通常の電圧を越えて、瞬間的あるいは、断続的に発生する過電圧の事を言います。このサージの電圧によって、電気機器は絶縁破壊や機能停止、劣化などの影響を受けます。サージは、図4に示すように、高電圧で低周波です。サージの発生原因としては、自然現象による雷サージ(直撃雷サージ、誘導雷サージ)、電気回路系統の過渡現象による、開閉サージ、故障等による過電圧サージ等があります。

ノイズ

ノイズは、半導体など弱電機器を破壊する程では無いが、正常な動作に支障を生じさせたり、コンピュータのメモリやディスク内の記憶を喪失させたりする虞れのあるレベルの異常電圧の事を言います。ノイズは図4に示すように、サージに比べ低電圧で高周波です。(出典:橋本著「雷とサージ」)

図4 サージとノイズ
図4 サージとノイズ

避雷器(SPD)と避雷針の違い

避雷針(受電部)は落雷をこれに誘い、人身事故を始めとして、建物の火災防止、その他諸設備への被害を防ぐことを目的としています。避雷針(受電部)で雷電流を捕捉できれば、雷放電の大部分のエネルギーは大地に流すことができます。しかし、避雷針(受電部)だけでは、大地電流による誘導雷から機器の被害を防ぐことができません。この誘導雷に対して効果を発揮するのが、避雷器(SPD)なのです。

SPDの仕組み

SPDとは低圧サージ防護デバイス(Surge Protective Device)の略称です。

SPDは1個以上の非線形素子で構成され、雷サージなどの過渡的な過電圧を制限し、サージ電流を分流させることで、電気機器を保護することができます。雷サージなどの過電圧に対して、SPDは瞬時に高抵抗から低抵抗となり雷サージを流し、その後すぐに高抵抗に戻る機能があります。

別名:避雷器、アレスタ、サージプロテクタなど

非線形素子とは、MOV(金属酸化物バリスタ)、GDT(ガス入り放電管)、ABD(アバランシブレークダウンダイオード)、TSS(サイリスタ)など。

SPDなし SPDあり

建築物等の雷保護

建築物等の雷保護は①受雷部システム②引下げ導線システム③接地極システムで構成します。まず、避雷針などの受雷部システムで雷撃を受け止め、引下げ導線システムで受雷部から大地(アース)へ雷電流を流し、接地極システムで安全に大地に雷電流を放流させます。受雷部システムについては保護角による方法と回転球体法の2種類があります。

保護角による方法 回転球体法

酸化亜鉛素子とは

OTOWAのSPD・避雷器には、酸化亜鉛素子(ZnO素子)が内蔵されています。SPD・避雷器の心臓部にあたる酸化亜鉛素子は厳重な品質管理のもと、製造されています。原料の酸化亜鉛に数種類の微量添加物を混合したものを用途に応じたサイズに成形して、高温で焼結させたセラミックスで、優れた電圧-電流特性と高い放電耐量を持っています。

酸化亜鉛素子(ZnO素子)とは

微細構造
酸化亜鉛の結晶粒子とそれを取り囲む高抵抗の粒界層からなる微小バリスタが直列、並列につながった複合構造になっています。そのため酸化亜鉛結晶粒子径が同一であれば、バリスタ電圧は厚みに比例し、サージ耐量は面積に比例します。(右は当社走査型電子顕微鏡による)
電気的特性
酸化亜鉛素子は通常の抵抗体に比べて非常に大きな非直線性の電圧-電流特性を持つため、印加電圧が微小な領域では絶縁体として、雷サージのような電圧が大きい領域では導体として働きます。この働きにより雷サージから機器を安全に守ることができます。

酸化亜鉛素子(ZnO素子)の特長

避雷器(アレスタ)およびサージ防護デバイス(SPD)に用いられているZnO素子は厳重な品質管理のもとで製造され、優れた非オーム性と高いサージ耐量ならびに高信頼性を有しています。

優れた非オーム性
ZnO素子に過大なインパルス電流が流れたときの端子電圧を可能な限り低く抑え、電子機器や電力施設を保護します。
高いサージ耐量
ZnOセラミックスの均質性の向上によるサージ電流の均等分担と、高い沿面絶縁性を実現しています。
長寿命
回路(線路)電圧が常時課電される状態に対して安定性、信頼性が高いです。
幅広いラインナップ
交流用並びに直流用において低圧から高圧までのシリーズ化により幅広いニーズに対応しています。

雷放電現象

雷放電現象

激しい雨や雷、雪を伴う積乱雲は、雲の内部であられ※1や雹(ひょう)※2 が衝突することにより正電荷・負電荷が分離する作用があります。雷を伴う積乱雲(雷雲)は、電荷分離が特に強いため大気の絶縁が破壊され、雲内や地表とのあいだで放電が起こります。これが雷です。
積乱雲内部の帯電メカニズムは厳密にはまだ解明されていません。最も有力な説は、あられと氷晶※ 3の衝突によりあられと氷晶がそれぞれ異なる極性に帯電するというものです。-10℃を境に、あられは負に、氷晶は正に帯電します。軽い氷晶は上昇気流により上方に位置し、重いあられは下方に位置するため、雲内に正・負の電荷が溜まると考えられます。地表では雲底の電荷に対応した反対極性の電荷が静電誘導作用によって集まり、蓄積されるにつれ、雲と大地間の電圧が高まります。最終的には大気の絶縁を破壊し電気的に結びつくことで対地放電(落雷)し、電荷が中和されます。これが落雷の主放電です。

絶縁破壊
導体と導体のあいだ(ここでは雷雲と大地)を隔離している絶縁体(ここでは空気)が破壊され、絶縁状態が保てなくなり、電流が流れること。
電  荷
電気のことを物理的、あるいは微視的に言うとき、電荷と呼ぶ。
  1. あられ雲からから降る直5mm未満の氷の粒。
  2. 雹(ひょう)積乱雲から降る直径5mm以上の氷塊。
  3. 氷晶数μmから100μm程度の小さな氷の結晶のこと。氷晶が大きく成長した場合、あられや雹などになる。

基礎データ

放電時間
約0.001秒~1秒
周辺の温度
約3万℃
放電の全長
数km
世界中で観測される雷の数
毎秒50回
電圧
約1億V
電流
3000A~20万A

図1 対地放雷(落雷)の様子

夏季雷と冬季雷

雷は季節性や電気的性質の違いから、夏季雷と冬季雷の2つに大別されます。
夏季雷は、夏の太平洋高気圧に覆われた気団の中で、日射に伴う熱と上空の寒気によって大気が不安定になり発生します。一方、冬季雷は、シベリア気団の強い寒気の吹き出しに伴い、寒気が相対的に温かい日本海上を通過することで大気が不安定になり発生し、特に、東北から北陸地方にかけての日本海沿岸部で多発します。
図1は、夏季雷と冬季雷を模式的に示したものです。夏季雷と冬季雷ともに基本的には上部に正電荷分布領域、下部に負電荷分布領域をもつ構造になっています。冬季雷の負電荷や雷雲下部の正電荷は短時間(数分から10数分程度)で消滅するため、短命な電荷分布を(+)、(-)で示します。夏季雷は冬季雷に比べ、雲底と雲頂の高度が高く、雲内の電荷分布領域は地表から約5km以上の高度に分布しており、落雷回数が多いことが特徴です。一方、冬季雷は夏季雷に比べ、雲底と雲頂の高度が低く、雲内の電荷分布領域は地表から約2km以上に分布します。落雷回数は少ないですが、1回の落雷の中和電荷量(落雷のエネルギー)が夏季雷の数10倍から100倍程度大きい場合が多いことが特徴です。

図2 夏季雷と冬季雷の模式図
図2 夏季雷と冬季雷の模式図

落雷の種類

落雷は極性と放電の進展方向の違いにより、図3に示すように4種類に分類されます。落雷時に雲内の正電荷が中和される場合は正極性落雷、負電荷が中和される場合は負極性落雷と呼びます。落雷の主放電(激しい発光)に先行するリーダの進展方向が地上から雷雲に向かう場合を上向き、雷雲から地上に向かう場合を下向きと呼びます。夏季雷の落雷の90%以上は、下向き負極性落雷(a)で、落雷の放電路の枝分れが下向きに広がり、夏季によく目にする落雷がこの現象です。一方、冬季雷は、正極性落雷(b)、(d)が約半数を占めます。これは、夏季雷に比べ、雲内の上昇気流が弱いため、雷雲内の下層の負電荷や正電荷が雨や雪と共に落下し、上層の正電荷が残るため、正極性の落雷が多くなると考えられています。また、雲底が地表に近いため、高構造物から上向き落雷(c)、(d)の発生頻度が高いことが特徴です。

図3 落雷の種類
図3 落雷の種類

落雷の過程

ここでは、よく見られる下向きの負極性落雷の多重雷の仕組みの一例を紹介します。

図4 落雷の過程(例)
図4 落雷の過程(例)

雷の種類と特性

夏の代表的な雷 – 熱雷(ねつらい)

夏の夕立のほとんどが「熱雷」によるものです。太陽の強い日射によって、地表は熱せられ上昇気流が発生し、大気は不安定になって積乱雲(入道雲)が発生します。熱雷はこの積乱雲によって発生します。

夏の代表的な雷 - 熱雷(ねつらい)

季節の変わり目の雷 – 界雷(かいらい)

「界雷」とは、季節の変わり目などによく発生します。温暖な気団と寒冷な気団、この2種類の異なった気団が接するとすぐには混じり合わないで、寒冷前線・温暖前線となります。界雷はこの2つの前線付近で雷雲が形成されて発生します。

季節の変わり目の雷 - 界雷(かいらい)

低気圧や台風による雷 – 渦雷(うずらい)

「渦雷」は発達した低気圧や台風の中心付近などで、周囲から吹き込む気流によって上昇気流が通常より盛んになると発生します。気温が高い時は勢力を長時間持続し、移動速度が速いため広範囲に影響を及ぼします。

低気圧や台風による雷 - 渦雷(うずらい)

雷の特性比較

  夏季雷 冬季雷 誘導雷
雷雲の電圧※1 数千万~数億V 数千万~数億V
雷雲の高さ(雲底) 1200~2000m 300m~
雷雲の高さ(背丈) 7000~16000m 4000~7000m
落雷電流(波高値) 数千A~300kA 数千A~300kA
継続時間(波頭長) 1~数十μs 1~数十μs 1~数十μs
継続時間(波尾長) 数十~数百μs 時には数十ms超えるものあり 数~数十μs
配電線に誘起される電圧(波高値) 最大 数百kV※2
エネルギー 大きい 極めて大きなものあり(夏季雷の数百倍) 小さい

電気設備学会:雷と高度情報社会(1999) より

  • 雷雲の電圧は推定値
  • 6kV配電線に取付けられたアレスタに流れる電流の90%以上は2000A以下