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第21回雷写真コンテスト入賞作品発表

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第21回雷写真コンテストに多数のご応募をいただき、誠にありがとうございました。
厳正な審査の結果、入賞作品が決定いたしましたので発表させていただきます。
多数の力作の中から選ばれた入賞作品を通じて、一瞬の煌めきである雷の美しさだけでなく、雷の脅威や自然のエネルギーを感じていただければ幸いに存じます。

入賞作品は下記リンクよりご覧いただけます。
https://www.otowadenki.co.jp/contest_category/num21/

審査員講評

 

審査員 東京大学 名誉教授 工学博士 石井 勝 氏

 
このコンテストも開始時から20年が経過し、写真技術にはこの間に質的と言ってよいほどの変化がありました。サイエンスの世界ではディジタル画像の加工は、特に衛星や地球外探査機搭載の撮像機器では前世紀から当たり前で、肉眼や銀塩カラー写真では見ることが不可能な、美しく着色された天体の画像をウェブ上で楽しむことができます。そのような加工が市販のディジタルカメラやスマホで撮像される画像にも普通に施されるようになりました。サイエンスの世界との違いは、原データが保存されているか否かです。今や市販のカメラやスマホでは撮像機能と画像のディジタル処理が混然一体となった機種が普及し、ユーザが意識せずともディジタル加工が行われて、学術的に意義のある写真かどうかを見分けるのが困難になってきています。一方、広いダイナミックレンジによって、ディジタル画像の方がより多くの情報をもたらすという利点もあります。現在、コンテストの応募規定を見直し中と聞いていますが、今回はこれまでの応募規定での最後のコンテストになるかも知れません。

 

審査員 NPO法人産学連携推進機構 理事長 妹尾 堅一郎 氏

 
雷光と雷鳴を日本語は区別する。雷光(視覚)は「稲妻/稲光」、雷鳴(聴覚)は「神鳴(かみなり)」である。英語でも、雷光はライトニング、雷鳴はサンダーだ。つまり厳密には「カミナリ写真」は一種の矛盾である。実際には一般的には光も音もひっくるめて「カミナリ」と呼ぶので「雷写真≒雷光写真」となる。さて、本コンテストには「見事な写真」が急増しているように感じる。他の被写体を写していたら偶然雷光が画面に入ったとか、風景(景観)写真を撮っていたら雷雲が近づいたので雷光を捉えた、といった写真を「青天の霹靂写真」と呼ぶことにしよう。稲妻を映すぞ、と構えていない「青天の霹靂写真」でも見事な写真になるのは、デジタルカメラの高性能化のお陰だ。受光素子の高度化でISO16000相当は当たり前、ソフトウエア比較明合成も珍しくなくなった。つまり、技術の進展が裏支えをしてくれている。結果として、「風景写真・カミナリ部門」的な領域が生まれつつある。さらに、生成AIによって、人工雷光も簡単に写真化できる時代となった。「撮ったのか」それとも「撮れてしまったのか」、「自然現象」か「人工生成」か、その見分けがつき難くなってきた今こそ、「雷写真」の再定義が必要だ。

 

審査員 デザイナー 喜多 俊之 氏

 
一瞬にして現れ消えてゆく雷は、太古の昔から私達にその時の風景と音で特別な現象として知られている。その瞬間をカメラに納めるには、その場に居合わせることや想像することなど、大きな偶然性が伴っている。OTOWA雷写真コンテストも早や20回を超え、今年度も内外の各地からの多くの優秀な作品が寄せられ、入賞、佳作が選ばれた。金賞の「静けさを切り裂く雷鳴」は審査員一同、満場一致した作品。夕暮れの静かな風景、その静けさを切り裂く稲光が印象的である。銀賞の「天翔ける電光」による立体的な雲の姿が、普段の穏やかな自然と異なる風景を捉えている。又、銅賞「天空の支配者」も巨大な橋と雷光の構図が見事であった。その他、佳作と学術賞においても世界でも珍しい雷の現象が新たなページとなっている。

 

審査員 公益社団法人 日本写真協会会員 山﨑 康生 氏

 
コロナが明けて、イベントなどの制約が解除され、旅行や外出が活発になり元気な日本が戻りました。一方近年、デジタルカメラの高感度化が進み、光が少ない夜景などが撮り易くなり、レベルの高い写真が多数寄せられました。審査員として大変嬉しい状況です。写真コンテストでは「明確な意図を持って伝える事」が評価の分かれ目となります。今回は、残念ながら「主役の雷」の迫力不足で、グランプリにふさわしい作品が見当たりませんでした。とは云え、風景写真として脇役、背景が揃ったバランスの良い秀作が上位に選ばれました。毎年申し上げておりますが「雷写真」はまだまだ未開拓の分野です。ダイナミックな自然現象「雷」を主役に捉え、本コンテストに挑戦して下さい。傑作の応募をお待ちしております。

 

審査員 音羽電機工業株式会社 代表取締役社長 吉田 修

 
この雷写真コンテストが20年を経過し、感慨深く、懐かしい思いでいっぱいです。 当社はあらゆる電気設備に雷対策が必要であると広く知って頂く為に、雷を身近に感じ、興味を持って戴こうと、雷写真コンテストを始めました。 当初は応募があるだろうか、継続しても大丈夫だろうかと不安に思う事もありました。 そして、継続する時、審査員の元東大教授、石井勝先生や元電力中央研究所の故横山茂先生から「これは学術的におもしろい」「学術的に価値がある」といわれ、学術賞を設けました。コンテストが学術に貢献している事に歓びを感じ、継続させる意義を再確認しました。 一方、この20年間は講評にある如く、技術の進歩が著しく、カメラのデジタル化が進展、種々の加減が可能となりました。これは学術的価値から遠ざかる傾向に向かい、審査員評価の分岐点となっています。 写景と雷が大切とはいえ、原点の学術的価値を置き去りには出来ません。 “自然の雷と共生する”理念に戻り、自然体の雷写真を追い求めてこそ、存在意義があると考えています。 今後の審査基準を時代に合わせつつ、自然の雷を追い求めて行きたいと思います。 たくさんの雷ファンが誕生する夢を描きつつ、御応募よろしくお願い致します。